ダーリンは12歳年下~遠恋の果てに~
『コホンッ!コホンッ!』
澄んだ空気がのどに痛い。
この冬何度めの風邪だろう?
日ごろの不摂生で体調を崩してばかり。
不規則な生活と仕事のストレスで睡眠もよく取れてない。
もう、寒いのは苦手だよ…
冬なんて大嫌い!
だって誰もあたしを暖めてくれないもん。
また今年も街にキラキラとイルミネーションが輝きだす。
でもあたしにはその輝きもなぜか物悲しく見える。
ゆうタンがそばにいてくれたら…
そしたらきっとこの街中のイルミネーションも胸がときめくほど綺麗に見えるはず。
やっぱり水商売は年末にかけてが稼ぎ時。
忙しくて、クリスマスなんかのイベントに浮かれてる場合じゃない。
ラブラブカップルを横目に体調が悪かろうが何だろうが休む暇なく働くしかなかった。
その日もいつものようにお店を終え、送りの車の時間が来るまでコンビニで時間をつぶしていた。
『あーー!しいたん!』
振り向くとゆるい巻き髪の女の子が彼氏と手をつなぎながら笑顔で立っている。
ちょっと前に、いつの間にかお店をやめた子だった。
『あれ!お店やめちゃったんだね。』
『うん……ってゆ~か、飛んだの(笑)』
『えぇっ!なんで??』
『だってさ~、クリスマスにお店休んだら8万円の罰金でしょ!』
あたしの働いてるお店は金曜日やイベントの日に欠勤すると8万円の罰金を取られていた。
だから、熱が38度以上でも意地でもとりあえず出勤する。
なので、薬と栄養ドリンクを飲みその上お酒も飲まなくちゃいけなかったから、よくお店で意識もうろうとして倒れていた。
『8万円なんてありえない!私クリスマスは彼氏と過ごすもん♪しいたんは?』
『う~ん…あたしはクリスマス予定無いし…とりあえず働くわ(汗)』
その後、USJのクリスマスイベントに行く予定や予約してるホテルの事、ディナーの事などなど延々聞かされた。
『のろけてる暇があったらお土産買って来なさい!(笑)』
『は~~い!しいタン様!(笑)』
いいなぁ…
やっぱりそばにいるカップルならこうやって2人の思い出を作っていくんだろうな…
けど…
でも!!
今は我慢!
お正月休みまでもう少し。
ゆうタンに会えるまでもう少し。
その一心で、目まぐるしい年末を乗り切った。