噛みついてもいいですか。
そして、今日初めて雄斗さんの家に呼ばれた。
まあ、何もされないんだろうなと半分諦めにも似た感情を抱えながら軽い気持ちで雄斗さんの家に上がった。
三十にもなると、余裕が出てくるのは本当らしく、二部屋あるマンションの一室だった。
一つはリビング、一つは寝室。
シンプルというか地味な印象の部屋だった。
物もあまりない。
「雄斗さんて、どんな仕事してるんでしたっけ?」
「輸入会社の事務」
「じゃあ、輸入ものには詳しいんですか?」
「まさか。国産も外国産も何が違うんだって感じ」
「……それ、本当にやってけるんですか?」
「文学部の大学生に言われたくないね」
「文学部をばかにしないでください」
そりゃあ、文学部は就職に断然不利だってみんなに言われるけど。
雄斗さんまでそんなことを言うなんて。
「ごめんごめん。これで機嫌直して」
笑った雄斗さんが拗ねたあたしの目の前にチーズケーキが乗った皿を置いた。
「……女は甘いものに釣られるなんて」
「でも好きやろ?」
「好きですよ」
あたしは自棄になってチーズケーキにフォークを刺した。
「ケーキ、好きだもんな」
ニヤッと笑った雄斗さんに負けた気分。
まあ、何もされないんだろうなと半分諦めにも似た感情を抱えながら軽い気持ちで雄斗さんの家に上がった。
三十にもなると、余裕が出てくるのは本当らしく、二部屋あるマンションの一室だった。
一つはリビング、一つは寝室。
シンプルというか地味な印象の部屋だった。
物もあまりない。
「雄斗さんて、どんな仕事してるんでしたっけ?」
「輸入会社の事務」
「じゃあ、輸入ものには詳しいんですか?」
「まさか。国産も外国産も何が違うんだって感じ」
「……それ、本当にやってけるんですか?」
「文学部の大学生に言われたくないね」
「文学部をばかにしないでください」
そりゃあ、文学部は就職に断然不利だってみんなに言われるけど。
雄斗さんまでそんなことを言うなんて。
「ごめんごめん。これで機嫌直して」
笑った雄斗さんが拗ねたあたしの目の前にチーズケーキが乗った皿を置いた。
「……女は甘いものに釣られるなんて」
「でも好きやろ?」
「好きですよ」
あたしは自棄になってチーズケーキにフォークを刺した。
「ケーキ、好きだもんな」
ニヤッと笑った雄斗さんに負けた気分。