噛みついてもいいですか。
ついさっきあたしに背を向けた雄斗さんがあたしと向き合う。


その目が大きく見開かれていた。


傍の紅茶を飲み干してあたしは再び雄斗さんを見る。


「にな、どうしたん?」


眉を寄せて怪訝そうに聞いてくる。


ほら、また子供扱いしてる。


「大学生が大の大人の鎖骨に欲情してはいけませんか」


あたしは思ったことをそのまま口にしていた。


たぶん、これくらい言わないとわからないだろう。


「……欲情?」


雄斗さんの口がポカーンと開かれる。


……言ってもわかってもらえなかった。


怒りを通り越して呆れてしまう。


「そりゃあ、あたしは大学生です。まだ未成年です。彼氏だって雄斗さんが初めてだし、雄斗さんから見ればまだまだ子供だし、将来が全く見えない文学部です」

「最後、関係ないよな」

「でも、雄斗さんが好きな気持ちは本当です。欲情だってします。…………雄斗さんは、こんなあたしなんか女として見られないでしょうけど」


貧乳だし、足は太いし、腹は出てるし、大人の色気とかいうやつなんか皆無だし、雄斗さんが手を出したくない気持ちもわからなくないけど。


「……にな」

「あたしだって、雄斗さんとやりたいです。手出されても構わないと思ってます」


雄斗さんはこんなこと言われても困るだけかもしれないけど。


手を出されないのなら、こっちから仕掛けてやる。


処女のくせにどんだけ溜まってるんだとかいう突っ込みはこの際無視だ。


毎回鎖骨を覗かせる雄斗さんが悪い。


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