噛みついてもいいですか。
それから、兄貴は度々雄斗さんを連れてきて、あたしを巻き込んで酒を飲んだ。


週一以上は必ず雄斗さんは家にやってきて、酒を飲んで日付が変わらないうちに帰る。


三人でいれば、あたし達は大いに盛り上がった。兄貴は酒は好きだけどあたしよりも下戸で、面倒見のい雄斗さんに毎回「もうやめろ」とビールを飲む手を強制終了させられた。


おかげで、兄貴が酔い潰れることは一度もなかった。


最後に三人で飲んだとき以外は。


ずっと何も言わなかったけど、おそらく兄貴はあたしの気持ちに気づいていた。


あたしが雄斗さんに一目惚れしたことも、三人で飲む度に好きな気持ちが募っていったことも、だからこそ身内にならできるボディタッチが酔っても雄斗さんにできないことも、そしてこの気持ちが単なる憧れだけに留まっていないことも、全部。


だから、この時初めて酔い潰れてくれたのかもしれない。


その日、兄貴は序盤から缶ビールを四本煽った。雄斗さんが止める間もなく、兄貴はわずか一時間で床に突っ伏してわずかないびきをかいて寝てしまった。


「……こいつ、今日どうしたん?」


困惑する雄斗さんにあたしは苦笑を浮かべるしかなかった。


「になは平気?」


この時、既に雄斗さんはあたしを「にな」と呼ぶようになっていた。


「平気……です」


でも、二人きりでいることは、初対面で飲んだ時以来だった。


それからはずっと兄貴があたし達の間にいた。


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