噛みついてもいいですか。
空の缶ビールは全て床に転がって、あたし用のチューハイはまだ缶一本分以上残っていた。


あたしはその残りを一気に飲み干した。


この二ヶ月でわかったことは、あたしは酔うとかなり積極的、というか暴力的になる。


酔い潰れそうになる兄貴の頭や背中を全力でバシバシ叩いて、何度雄斗さんを呆れさせたことか。


でも、そんなものは欲求不満をぶつけているに過ぎない。


本当は、すぐにでも雄斗さんを押し倒してしまいたい衝動に駆られる。


押し倒して、首筋に吸い付いて、鎖骨に歯を立てて、あたしの印を刻み付けてやりたい。


鎖骨をあたしの前で無防備に晒しているのが悪い。というのは言い掛かりにしかならないことはわかっているけど。


いつもより冷静なあたしや他人がそんなこと聞いたらどんな変態だとドン引きされるに決まっているけど。


あたしは妙な性癖を持っているらしい。


そして、今もそうだ。


仰向けになって目元を腕で隠して寝ている雄斗さんの鎖骨にドキドキしている。


あたしは何も知らない。男の生態など何もわかっていない。触ったら……どうなんだろう。


あたしと雄斗さんの距離は50センチ。


……触りたい。


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