噛みついてもいいですか。
あたしは寝ている二人を起こさないように、少しずつ雄斗さんとの距離を縮めていった。


寝転がっている雄斗さんの目の前まで来たとき、不覚にも心臓が高鳴った。


緊張と酔いとときめき。


指や唇だけでもいい。触ってみたい。


おそるおそる手を伸ばしてみる。


指先が震える。鎖骨に目が行く。


肌に浮き出た鎖骨に心臓がギュッと締め付けられる。


震える指先が肌にわずかに触れて、あたしは思わず指を離してしまっていた。


指に一瞬感じた、熱い体温と固い感触。


男の人に触ることって、こんなに緊張するんだ。


もう一度指を鎖骨に置いて、わずかに体重をかける。


ゆっくりと顔を近づけてみる。


心臓の鼓動が頭に響いて熱い。


雄斗さんの鎖骨が徐々に視界を埋めていく…………


「何してるん?」


低い声が耳元で響いて、あたしは動きを止めた。


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