[完]俺様くんがスキなんです!!
「どした?」
<おー!!って第一声がそれかよ>

健人はクククッと喉を鳴らして笑っている。

「悪いかよ」
<いや、別に?逆に風磨らしくていい>
「何だそれ」

相変わらずの発言に口角があがる。

<どう?仕事。順調?>

健人は俺が跡取りで医者になったってことは知っている。

きっと親父の伝達だが……

「まぁな。何とか」
<へー、風磨でも苦戦する物ってあるんだ>
「お前医者をナメてるだろ?」
<まさかまさかー。とんでもない」

健人のヒビリっぷりに思わず笑ってしまう。

「そっちは?仕事なんだっけ?」
<あ、俺?俺弁護士>

あぁ、言われてみればそうだったな。

健人は文科系でトップだったし。将来は弁護士になるとか言ってたな。

<でも困ったお客さんが来てさ?>
「……困った客?」
<そ、だからそのことで今日電話した訳>
「は?何で俺?」

別に俺その客と接点ある訳じゃねーしそんなこと言われてもわかんねーよ。

<ま、とりあえずこっちの話を聞いて?>

俺なしぶしぶ健人の話を聞くことに……

<そのお客さんの依頼がね、恋人を探して欲しいのんだけどな?>
「は?それ探偵に頼めよ」

弁護士の仕事じゃねーだろそれ……

<最初そう言ったんだけど
まぁそのお客さんが親しい人だったから
引き受けることにしたんだけど……
その人にはある問題があったんだ>
「問題?」
<そ、それは人を信じられないんだ>

それって……

「人間不信ってことか?」
<そ、だから親しい俺に頼んだんだと思うけど
人間不信になった理由はその恋人にあったんだ>

そいつのせいで人間不信になったのにその恋人を探すのか?

<俺はあまり勧めなかったんだ。
けれど最近街で見かけたからって
どうしても会いたいって聞かなくてよ>
「なんでその客は人間不信になったんだ?」

そこから調べないと精神的ダメージを受ける前に防ぐことはできない。

<……>

無言?

「健人?」
<ごめん風磨。
その理由っていうのがちょっと複雑なんだ>

複雑……?

「教えれないってことか?」
<いや、教えるけど……よく聞いてくれ>
「あぁ……」

なんで健人がこんなに深刻に悩むのか気になった。

<そのお客さんは……
恋人に置いてかれたんだ>
「は?」

頭が凄い固い物で殴られた気がした。

<恋人が急にいなくなったんだ……
なぁ、風磨ここまで言って気づかないか?>

気づかない訳がない。

こんなに一致するのは健人の親しい仲で一人しかいない……

<そのお客さんっていうのは……
美紅ちゃんだよ>
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