[完]俺様くんがスキなんです!!
歪んだ景色の中私は前を向くと
健人くんがふわっと笑っていた。

そして手を挙げて私達のもとから離れた。

その瞬間私は風磨の絡まっている腕をそっと下ろす。

そしてそのままゆっくりと後ろを振り返る。

やっぱりそこには……
私が見た時と変わってない黒髪の風磨。

「何泣いてんだよ」

そしてそっと出逢った時のように
涙を拭ってくれる。

「バカ、連絡くらいして欲しかった……
それだったらいろいろ準備してきたのに」
「別にそんなの必要ないから」
「……だって今すっぴんだもん」
「すっぴんだって変わんねーよ」

それどういう意味よ……

「美紅」
「何よ?」

ちょっとさっきのことが気になって
冷たく当たってしまう。

「あそこ行かね?」
「へ?」

風磨が指差したほうを見てみると……
ライトアップされた大きく湧き出ている噴水。

「あそこで話したいことがある」

その言葉に不安になりながらも

「ん、わかった」

私達はカフェを出て噴水に向かった。

______________

噴水の近くに行くとたくさんのカップルで
賑わっていた。

そのまま私達は近くのベンチに座る。

「ここの噴水ってどういう意味か
知ってるか?」
「へ?」

突然そんなことを聞かれて変な声が出る。

「さっきからライトアップ
されてるだろ?」
「うん」

この噴水は虹色の七色の色が交代で出てくる。

「そして暗い色から明るい色に変わってる」
「ほんとだ……」

紫からピンクに変わったり
青から赤に変わったり……

「だから希望っていう意味なんだとよ」
「ふーん……」

私は興味深くまじまじと噴水を見る。

するといきなり噴水の水をすくって
私にかけてきた。

「ちょっと……」
「まぁ、いいだろ?」

悪戯っぽく笑う顔はまさに悪魔。

「だからさ、教えてくれよ?」
「ん?」
「美紅の過去
美紅はどこで一体何をして……
何を思っていた?」

そういう風磨の顔は真剣そのものだった。
< 215 / 232 >

この作品をシェア

pagetop