Cold phantom
この男子生徒は私達と同じく、今年三年生になった天倉和樹(あまくらかずき)君。

度の強い薄型の眼鏡をし、ハンサムでかつ少し細い目をし、就職活動する程の整った物ではないが、少しだけ崩した感じの黒髪の七三分けが特徴的な見た目にも頭の良さそうな男子。

いや、見た目と同じくの優等生で学年トップの常連だ。

ただ、その認識をたまに改めたくなるようなギャップの方が強かった。

勉強より何より楽しい事を最優先する秀才だからだ。

私達のグループに入っている理由もただただ弄りがいのある対象がいて楽しいかららしい。

無論、弄られる相手はみーちゃんだけど…。

みーちゃんは素早いチョップを喰らわせた後、また素早い手付きで和樹君の頬をつねる。

「誰が嫁よ、誰がっ!」

「いだいいだい、そんなに強くつねるなって。」

そう良いながらも天倉君はニヤニヤした顔をほどかない。

そんな小さい騒ぎを聞いてか、やって来る人はやはり知人だった。

「お前ら本当に目立つな。こんな人混みの中ですげぇ目立ってたぜ?」

そう言ってこの仲良しグループ最後の人物、湯川君が気だるそうに人混みの中から現れた。

個性豊かな面々のこのグループのリーダー的存在で、何かしら馬鹿騒ぎが大好きなムードメーカー。

思い立ったら即実行を座右の銘にしているだけあり、遊びの誘いがあれば先ず湯川君が発端になることがほとんど、舞ちゃんから聞かされたバーベキューの話も勿論彼からだ。

それに付き合わされているのは確かだけど、何だかんだみんな楽しめているのもまた事実だった。

寝癖や服装を正さないズボラな性格だが、元々が中々の美形の持ち主で、しっかり髪型をセットすればかなり格好良くなるのだが、彼自身に美形である自覚が無く、更にはワイルド趣向を地で行く大人になる予定だとか何とか訳も解らない事を言って、髪のセットを拒んでいる。

勿体無いほどに変わり者だ。
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