Cold phantom
「俺は姉貴の奢りでアメリカンを。」

「はい、アメリカンと、里村君は何に?」

「あ、それじゃ俺もそのアメリカンで。」

「はーい、アメリカンを二つ、と」

二人分の注文をかきこんで手元近くにある洗いたてのコーヒーカップを二つ片手で持ち、メーカーにセットすると、それと同時にカタッとトレーが置かれる音がして振り向いた。

「しょうこぉ~、このカップ、洗っておいてね…って、もう来てたの?」

「来てたの?、じゃねぇよ姉貴。あの時姉貴が全然来ねぇから入学早々遅刻するとこだったし。」

「いやまぁ、それに関してはほらっ、約束通りコーヒー一杯サービスで許してくれるんでしょ?」

「…本当なら三人分位は貰いたかったけどな。」

そう言って阿檬君は納得いかない顔で出されたばかりのアメリカンコーヒーに少量の砂糖を加えていた。

しかし、納得いってないのは彼だけじゃないようだ。

「三人分?隣の里村君とで二人分なら解るけど、なんで三人分?」

そう阿檬君に問いたのは 言うまでもなくみーちゃんだった。

「本当ならもう一人連れてくる予定だったんだけど、槍倉に引っ越してきたばかりで部屋の整理とかがまだらしくて…」

「引っ越し?引っ越してくるぐらい遠いとこに住んでるあんたの友達なんていたっけ?」

みーちゃんは不思議そうに阿檬君に聞くが、返事をしたのは里村君の方だった。
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