Cold phantom
そこでふと腕に振動を感じて、私はそれを見る。

着けていた腕時計型のリングフォンが小さな青い光を放っていた。

ホログラムを開き調べてみるとメールのようだった。

見慣れた文字が並んでいたがそれもそのはず、さっき沙冬美ちゃんのフィーチャーフォンの内容とほぼ同じだった。

今になって届くと言う事は多分私が最後のようだ。

いつか、一斉送信のやり方を教えておいた方が良いだろうか…。

湯川君は機械音痴な所があるから、多分一人づつ文字を打ち直してるに違いない。

そう思いながらホログラムをホーム画面にすると、不意に時刻を見た。

2147年4月8日と書かれたその日付を見ていると、不意にその奥に見えた桜の木の下に目がいった。

桜の木の下、そこに人がいた。

何をやっているかまでは解らない、いやそもそも何かをやっていると言う感じにも見えなかった。

ただそこに立っているだけ、もう少し言えば桜を見ているだけ、そう言えば良いだろうか。

動く気配を感じなかった。

槍倉第一は鉄棒や遊具などの物は一通り揃った子供達が遊ぶ公園だ。

坂道の道路に挟まれるように立っている事もあり、高地と低地を少し広めの階段でつないでいる。

高地は家一つ半位の狭い土地にベンチや水のみ場があり、低地は家三つ程が入りそうな土地に遊具が並んでいる。

桜は高地の真ん中に立っていてかなり目立っていた。

私はその光景に反応したのか、はたまたその人物が気になったのか。

釣られるように私は桜に向かって歩を進めていた。
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