Cold phantom
本当に無意識だった。

不思議なほどの安心感が気持ちを支配している。

この安心感は一体何から来るのか、私は自分に問いそして一つの答えを導き出す。

既視感…そう、既視感だ。

「うっ…」

突然頭痛が激しくなる。

忘れられた記憶をほじくりかえすような事があると酷い頭痛になると病院の人間は言っていた。

今までも何度かこんな症状に悩まされてきたが、逆に言えば、失われた記憶を取り戻すヒントがそこにあるのだと、いつもプラス思考に考えていた。

だけど、今回は今までで一番酷いかもしれない。

近付くにつれて視界が揺らぎ、しっかりしていた歩みももつれ始めた。

バランスを崩し、履いていたスニーカーが地面を軽く削り派手に音を立てた。

(いかなきゃ…)

不思議な事に、吐き気すら催しそうな状態にありながら、尚も私はその人に近付こうとしていた。

酷い頭痛のする頭を手で押さえながら目を強く閉じていた。

閉じて…それから先は何も見えないまま私は意識を失った。

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