いつも同じ空の下で


氷の崩れる音が小さな事務所に響く

時折、痛そうに顏を歪めるユウキ

すると




「本当にうちの店員が申し訳なかった、その服もクリーニングして返させてくれ」



店員がユウキの手を大事そうにとり深々と頭を下げた




「いっいえ! 急に振り返った私が悪いんですっ!! あの・・・ポットも割ってしまって・・」



恥ずかしそうに下を向いて、シュルシュルと空気が抜けたみたいに体を縮こませたユウキ




「あぁ、ポットなんて君が気にしなくていい。それより腕が真っ赤だな・・・一応医者に見せた方がいい。僕が連れて行こう」

「え?」



勢いよく顏を上げたユウキに一度微笑みかけた後

すくっと立ち上がると、座っていたユウキの膝の下に腕を入れて軽々とユウキを持ち上げた男性




おっお姫様抱っこだぁ!!




初めて見たお姫様抱っこに、私はポー―っとなりながら、その場に根が生えたように立ち尽くした


ユウキに至っては、もう放心状態



「すまないけど、今からこの子を病院に連れて行くから、この子の荷物を持ってきてもらえないかな?」

「あ、はい!!」



ニッコリと笑った男性に見惚れていたであろうアヤカは、ぴょんとその場に跳ねる様に飛びあがり

慌てて店の中に戻っていき、私達3人分の荷物を持ってきて、ユウキの荷物を男性に渡した



「ありがとう。この子は責任持って家に帰すよ。本当にすまなかったね」



申し訳なさそうに頭を下げて、店員は放心状態のユウキを抱っこしたまま、裏口から駐車場へと消えて行った


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