いつも同じ空の下で

冷たい風が頬を撫でる

止まる事のない涙が頬を伝って、顎先から落ちていく

すると




「忘れられる」




それまで黙っていた星野さんがポツリと囁いた

その言葉に、ゆっくりと伏せていた顏を上げる




「人は忘れていく、生きていく為に」



じっと私を見つめる星野さん

そして、私の頬の涙を親指で拭った




「焦らなくていい。ゆっくり進めばいい」




彼の真っ黒の瞳が温かい

彼の優しさが心に染みる

大きな手から感じる温もりが、心を癒す




「はい」





―――それから「寒いし帰るか」と言って車に向かった星野さん

私は涙を拭いて、彼の後ろをトボトボと追った




――大丈夫

忘れられる

ゆっくり歩いていけばいい




自分の気持ちを言葉にした事で、なんだか少し心が軽くなった気がする


きっとこれも、星野さんのおかげだ


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