いつも同じ空の下で



「ヨシキ~! 早く~!!」



遠くで空を見上げながら、ゆっくり歩いてくるヨシキに手を振る



今日は快晴

気持ちいい程の、陽気な春の日差し



ヨシキを待たずに、なだらかな坂を上る

見慣れた景色は、以前と変わらずにそこにあった




今日は私達の思い出の公園に来ている

明日、ヨシキはイギリスに発つ―――





「ジュリ、走ると転ぶよ」



駆け足で坂を上る私の後ろで、ヨシキがニッコリ笑って追いかけてくる



「早く早く!!」



いつもの様に展望台へ向かう私達

春の日差しを浴びて、木々や花々がキラキラと輝く




「わぁ~!! 綺麗! 満開だ!」




展望台からの眺めは、2年前と変わらず綺麗だった

一面ピンクの絨毯

その下には、黄色の菜の花が広がっている




「やっぱり、ここの桜が1番だ」




少し遅れて展望台にやってきたヨシキ

目の前に広がる一面の桜を見て、眩しそうに目を細めた



ヨシキと見る3回目の桜

次見られるのは、4年後

そう思うと、寂しさが再び胸の中に宿る




そんな気持ちで、ピンクの絨毯をじっと見つめていると、突然後ろからギュッと抱きしめられた



温かいヨシキの胸

力強い腕

爽やかなシトラスの香り

右の薬指には、リングが光っている




抱き合ったままり込む私とヨシキ

何も話さなくても、きっと同じ事を考えている



この胸が張り裂けそうな思いも

きっと同じ


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