不滅の妖怪を御存じ?
「時間は一人一分です。」
試験官も気付いていないようだ。
そうしているうちにも新種の河童は藍の横のふすま目指してドンドン進んでゆく。
ここは引き止めて河童たちのところに戻してあげないと。
思うがいなや、藍はパッと横を通り過ぎようとした新種の河童の手首を掴んだ。
「あっちに戻らないの?」
紙に巻かれた河童たちがいる方を示せば、口をポカンと開けている顔と目が合った。
茶色い目が綺麗で、掴んだ手首も人間のような感触だった。
最近の河童は人間そっくりなんだな、と藍は思う。
新種の河童は唇を震わせ、ようやく言葉を発する。
「な、なんで……」
「なんでって、君、新種の河童でしょ?」
藍の言葉に新種の河童は「ん?」という表情をする。
そして藍の目をじっと見つめてきた。
何かを窺うように。
数秒後。
ボソッと口を開く。
「俺が、河童?」
「河童じゃないの?」
きょとんと藍が言い返せば。
急に下を向きワナワナ震えだした。
え、と藍が困惑するとガバッと顔を上げ、
「河童じゃねぇよクソ女!」
ものすごい剣幕で怒鳴ってきた。
びっくりした藍は思わず右ストレートを相手の頬に入れてしまった。