不滅の妖怪を御存じ?
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入学試験第二科目は実技。
もしも何かあった場合の非常事態に備えて待機させられた石上桜はふぁ、とあくびを噛み締めた。
毎年待機役は暇なのだ。
子供の河童は妖力も小さいので大した問題は起こらない。
そして、試験で成功する人はほぼいない。
皆一様におぼつかない手つきで札を置きチョークを使い境界を引いていく、それが例年の試験風景だ。
六歳の子供たちは一生懸命なのだがいつも最終的には桜の気持ちが切れて飽きてしまう。
そもそも子供の河童なんて妖力が小さいからどこにいるのか把握しにくいので現状が分からないのだ。
お札が剥がれたら失敗、剥がれないまま一分経ったら成功。
それの繰り返し。
でも、今回は一人だけ例外がいるな、と桜は顔を少し動かした。
有田藍が隣の子供たちを見つめている姿が見える。
彼女はお札もチョークも持っていないようだ。
妖怪が見えるからいらないというのか。
はたまたただ無知なだけなのか。
これで後者だったらとんだ恥さらしだな、と桜は思う。
妖怪が見えると豪語していたのに。
そんなことを考えていたら、横からツンツンと佳那子に突かれた。
「なんだよ。」
「藍ちゃんが、変。」
「はぁ?」
言われた通りに見てみると、確かに変だった。
有田藍はひどく驚いた表情で部屋の中央の、何もない空間を見つめていた。