不滅の妖怪を御存じ?




「ね、そうでしょ。」


佳那子の声とかぶるように試験官が何か言った。
桜は瞬きもせず見つめる。

有田藍が試験官を見て、細長い紙を見て、それからまた宙を見る。

もしかしたら、とそんな思いが桜の中に生まれた。

試験官の手から伸びる細長い紙は空中で不自然にくるりと二、三回巻かれている。
そんな不自然が五つ。
短的にいえば、紙が空中で浮いている。

まるで、何かにゆるく巻きついているように。


もしかしたら、有田藍は見えているのかもしれない。
その考えに桜はヒヤリとする。

細長い紙に巻きつかれた河童を見る藍。
桜たちには何もいないように見えるのに。

そもそも。
妖怪は人間には見えないというのに、どうして古い巻物に妖怪の絵が描かれているのか。

鬼道学園では妖怪は人間の空想から生まれた、と教わった。
そうしていつしか形を持ち、心を持った、それが妖怪だと。
桜はバクバクと心臓が高鳴っていくのを感じた。

逆かもしれない。
そうであってもおかしくない。

紫月が言った通り、東北には本当に見える一族がいて。
そうして妖怪の姿形は人々に伝えられてきたのではないか。

バッと顔を上げる桜。
まさか、そんな。

そう思うと同時に、有田藍が動いた。




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