不滅の妖怪を御存じ?
⌘
わけがわからない。
佳那子にぎゅうぎゅう抱きつかれながら藍はそう思った。
ことの成り行きはなんだったっけか。
「クソ女」と言われたことにムカついて思わず少年を右ストレートで吹っ飛ばしたらいきなり伊勢千秋が「バク!」と叫んだ。
バク?
あの夢を食べる動物?
と藍がポカンとしているうちに伊勢千秋が素早くお札を飛ばす。
一直線にお札は茶髪の妖怪少年のおでこにくっついた。
そこには赤く筆で「縛」と書かれており、そこでようやく「バクってこれか」と納得した。
そして佳那子がいきなり抱きついてきて、今に至る、と。
「すごい!藍ちゃん本当に妖怪が見えるんだね!」
「え、うん。」
キラキラした目を向けられることに慣れていない藍は思わず目を逸らしてしまった。
すると、畳に大の字になって倒れている妖怪少年と目が合う。
真っ赤に腫れた頬に、ぶすっとした顔。
おでこのお札のせいで身動きが取れないようだ。
さすが伊勢千秋。
態度がデカいだけじゃなくてちゃんと力もあるらしい。
嫌な奴だけどデキる奴でもあるんだなぁ、と藍は微妙な気持ちになる。