不滅の妖怪を御存じ?
この妖怪少年はこれからどうなるのだろう、と藍が考えたちょうどその時。
少年が口を開いた。
「おい、暴力女。」
暴力女。
それが藍のことを指しているのだと気づくのに数秒かかった。
確かに初対面で右ストレートかましたのだから暴力と言われても仕方ない。
悪いことしたな、と少し思う。
しかし、妖怪少年の口から出た次の言葉に藍の表情は固まることとなった。
「俺、死にたくない、助けろ。」
なんだこのふてぶてしさ。
一番始めに出てきたのはそんな感想。
一言で言えば腹立つ。
ここまで人を苛立たせる頼み方が出来るのはある意味才能だ。
藍はふいっとそっぽを向き少年を無視することにした。
「あっおい、てめっ!」
妖怪少年は藍に向かって喚きたてる。
「聞こえてんだろ!」という怒鳴り声。
だが、そんな喚きも伊勢千秋のピシャリとした一言に打ち止められる。
「じゃあ、もうこの妖怪は始末してもいいですか。」
試験官の先生に許可をとっているようだ。
始末。
不穏な言葉に藍が首をかしげると佳那子が耳打ちしてきた。
「あの伊勢くんの隣にいる子、石上桜くんっていってね、七支刀っていう刀の継承者なの。その刀を使えば妖怪を殺せるの。」
「へぇ。」
佳那子の言葉に相槌をうちながら藍は妖怪少年を横目で見た。
口をポカンと開けて青ざめてる。
そりゃそうだろう。
カチャリ、と音を出し石上桜は刀を取り出す。
刀が中心から逸れて小さく七本に分かれている。
だから七支刀というのだろうか。