不滅の妖怪を御存じ?




「おい!女!頼む助けてくれ!!」


先ほどとは違い今度は本気で悲痛な声を出す少年。
石上桜の刀はゆっくりと少年の方へ近付く。


「七支刀を持てば、桜くんは妖怪の位置が見えるようになるんだって。ただ、どの妖怪もうにゃうにゃしたスライムにしか見えないからどんな妖怪かは分からないらしいけどね。」

「へー。それなら妖怪を斬り損ねることもないね。」

「ね。」

「おいおいおいタンマタンマタンマ!!女!なんでもするから!」


少年はいよいよなりふりかまっていられなくなったようだ。
あまりに必死なので少しかわいそうになった藍は目を向けてやった。

するとチャンスとばかりに少年は勢い良く話し始めた。


「お前が知りたい妖怪の情報があるんだったら教えてやる!どんなことでも!どんなことでもだぞ!少なくともここにいる奴らよりは俺の方が妖怪のこと知ってるぞ!なんてったって俺妖怪だからな!」

この条件でどうよ!と半ばやけくそ気味に少年は叫ぶ。

そんな少年を見ながら藍は考える。
妖怪の情報を教えてもらう。
それは、弓月のことを教えてもらえるかもしれないということ。

いいかもしれない。
妖怪について全然知らない藍が弓月と話したいと思っても彼がどこにいるのか、そもそも天狗とはどんな妖怪なのか分からないので手のうちようがなかった。
けれどこの少年は、弓月について何か知っているかもしれない。

試してみる価値はあるだろう。

藍はそう思うとスッと手を前に出し石上桜と少年の間に立った。




< 112 / 491 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop