不滅の妖怪を御存じ?
天音
⌘
スッと音もなくお茶が目の前に置かれる。
石上桜はそれに手をつけようと思ったが、部屋の状況を考えてやめた。
とてもお茶など飲める空気ではない。
重苦しい。
桜はちらりと斜め前に正座している佳那子に視線をやる。
佳那子はしゃんと前を向いていた。
「本日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございました。」
ふいに落とされた老齢な声。
先程までの重苦しい空気がいささかピリッとする。
大広間に集められたのは鬼道学園の重役二十名に、桜たち継承者の四人。
よもぎ色の着物を着た男性がコホンと咳払いをする。
鬼道学院理事長、伊勢千秋の父。
「では、早速本題に入りたいと思います。」
滅多にない緊急集会がかけられたのは入学試験がうやむやに終わった後だった。
「有田藍の処遇についてです。入学試験の成績は高成績でした。しかし一つ、気になる問題がありまして。詳しい概要は隅田佳那子さんに説明していただきます。」
「はい。」
目の端で佳那子がスッと立ち上がるのが見えた。
「入学試験実技科目でのことです。試験で使用する河童を入れるために一時的に南三十八番出入り口の札を剥がしたところ、海の怪系統の妖怪が侵入しました。その妖力は河童よりも小さかったので試験官の先生も私たちも気づきませんでした。」
スラスラと佳那子は言う。
その口調はどこか得意げで、喜んでいるようだ。