不滅の妖怪を御存じ?
「この学院に私たち西文家代々の書物を保管している書庫は十五あるのであります。しかし、十五番書庫のさらに奥には、禁書庫という、忌まわしい書庫がもうひとつあるのです。」
ギロリ、と。
何人かの重役が紫月を睨みつける。
鬼道学園は西文家に信頼をおき何世代にも渡ってその記録と一族を保護してきたというのに。
「……なぜ、君たち一族はその書庫のことを黙っていたのかね。」
「申し訳ありませんです。けれども、禁書庫というものはあってはならない歴史を保管する場所であるのでございます。見てはいけない歴史、という言い方で我が一族では伝わって参りました。」
そこで言い切ると、紫月はスッと汚い石をふところから取り出した。
様々な汚れが目立つが、その石に何か刻まれているのが見える。
「普段は我々西文の一族も禁書庫に入ってはいけないのでございます。例外を除いては。その例外というのが、この石に彫ってある事柄なのです。」
「……なんと刻まれているのかね。」
西文家が記録した書物は西文家以外の人には読めないように書かれている。
その石もきっとそうなのだろう。
紫月は自分の手元の石をじっと見つめる。
周りもみんな彼女を見つめ、部屋は静寂に包まれる。
数秒後。
紫月の声が落とされる。
「弓月という天狗と関わりのある人間が現れた場合、禁書庫三十八段の書物を読むべし。」
三十八段の棚には十五の巻物がありました、と紫月は呟いた。
有田藍が来てからはずっとその巻物を読み続けていたようだ。