不滅の妖怪を御存じ?
しかしこの少年はどうして人に噛み付くような言葉遣いしか出来ないのだろうか。
竜宮城の城主になるのはいいが人への話し方を改めないと攻め込まれるだろう。
いや、攻め込まれるなんてそんな戦国時代のようなことはないかもしれないが、良い印象は持たれないはずだ。
「それよりお前、名前なんていうんだよ。」
「藍だよ。藍染の藍。君は?」
「有明。」
有明。
月がまだあるのに夜が明けてゆく時間帯をさす言葉だったはずだ。
汚い言葉遣いに似合わずロマンチックな名前だ。
藍が布団から体を起こすと少年はふと思いついたように口を開いた。
「で、お前何か俺に聞きたいことあるんじゃねぇの?」
突然のその問に藍は一瞬黙った。
察しが悪いな、という風に有明は舌打ちする。
「俺、一応お前に助けられたからな。妖怪について俺が知っていることだったら教えてやるよ。」
ふてぶてしい有明の態度は今は置いておこう。
そういえば妖怪について教えてもらうために有明を助けたんだったな、と藍は思い出す。
何を聞こうか。
やはり弓月について。
でも藍の知っている限りでは弓月はいつも同じ人としか交流がなかった。
十人の風呂の客だけ。