不滅の妖怪を御存じ?
ほぅ、と息をついたとき、遠くからカーンと鐘が鳴る音がした。
七時。
かみの学年だけが朝食を取る時間だ。
行かなきゃな、と藍が立ち上がると同時に有明が目を覚ました。
「あれ、お前どこ行くの?」
欠伸をしながらぼんやりとした声でそう聞いてくる。
茶色い髪があちこちにはねている。
「朝ごはん。」
「えっ俺も行く。」
ガバッと起き上がった有明は着物が乱れていた。
「身だしなみ整えてよ。」
「どーせお前以外に俺は見えねぇんだからいいだろ。」
そう言いながら手早く着崩れを直す有明。
妖怪である有明の分も朝ごはんはもらえるのだろうか。
藍はそう思いながらふすまを開けて歩き出す。
「食事ってどこでだよ。」
「第三広間。昨日の紫月の話聞いてなかったの?」
「聞かねーよあんな女の話。」
ぶすっとした顔で前を見つめる有明。
どうやら昨日の紫月の妖力が小さい発言に怒っているようだ。
それでも反論するでもなくぶすっとしたままということは、彼の妖力が河童よりも小さいのは本当のことなのだろう。
フワフワとした茶髪を見る。
口は悪いが彼にも何か思うところがあるのだろう。
とりあえず有明の前では妖力関連の話はしない方が良さそうだな、と藍は思った。