不滅の妖怪を御存じ?
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ふぁぁ、と欠伸を噛み締めながら桜は目の前に置かれた食事を見た。
アサリの味噌汁にほうれん草のおひたし、玄米ご飯、出し巻き卵、焼き魚に柴漬け。
相変わらず清く正しい鬼道学園の朝食の献立。
真正面に千秋が座るのが見えた。
「おはよー。」
「おはよう。」
軽く挨拶を交わすと千秋は早速「いただきます」と呟いて食べ始めた。
桜もそれに釣られて食べ始めるが一向に箸が進まない。
目の前の食事に集中出来なかった。
千秋がキリリとした眉を釣り上げて桜の方を訝しげに見る。
「食欲ないのか?」
「いや……。」
千秋が人の心配をするなんて。
そう思うのも失礼な話だがそれほど珍しいことなのだ。
よっぽど自分は暗い顔をしていたのだな、と桜は息を吐く。
こんな心境じゃとても食べる気になれない。
諦めて箸を置いた。
「昨日の紫月の話、どう思う?」
一呼吸おいて、単刀直入に桜は聞いた。
千秋はじっと桜の目を見つめてくる。
数秒後。
ふっと目を逸らす。
「紫月は隠し事はするが嘘はつかない。」
千秋のその声は諦めにも似たような感情が浮かんでいた。
「有田藍を育てた弓月って妖怪を捕まえないことには話は進まないだろうな。」
弓月。
桜はそう呟くと、昨日の紫月の様子を思い出した。