不滅の妖怪を御存じ?



いつもはしゃんとしているのに、昨日は異様に元気がなかった。


「禁書庫38段にあった文書は大まかに言うと二つの歴史が記されておりましたのです。一つは、朝廷と東北地方の蝦夷たちとの争いの歴史。もう一つは、妖怪最高峰である九木の栄華であります。」


蝦夷たちの争いは歴史的事実を記したものだ。
何故禁書庫の棚にあったのか。

妖怪九木についても、鬼道学園に関わる者ならその妖怪について知らない者はいないだろう。

西文紫月の一族が何を持ってしてその二つをあってはならない歴史と判断したのか。

再び騒ついた場に、紫月は淡々と言葉を落とす。


「蝦夷と九木の話はあるところで交わるのでありますのです。先日私がお伝えした、東北に昔からいた妖怪が見える一族。彼らは、九木に支配され不当な扱いを受け苦しんでおりました妖怪たちと手を組んだのであります。」

紫月の黒い瞳は焦点が合わず宙を彷徨っていた。



< 131 / 491 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop