不滅の妖怪を御存じ?
「……戻れないの?」
二つ目の制約はとても不便そうだ。
千年前に戻ったとしたら、そこから元の時間に戻れないのだから。
戻るためには千年生きなくてはいけない。
「殺されない限り永遠に生き続けられる牛木ならではの制約だな。」
藍が有明の言葉を伝えている間に紫月は忙しなく手を動かしていた。
そこに書かれているのは記号とも絵とも言いづらい、藍には読めない文字。
ふ、と紫月は手を止める。
有明はもう一度紙を持ち上げ「願」の文字をペンで叩く。
「願の口。一代につき叶えられる願い事は一つだ。口に出せば願いは叶う。つまり、牛木が何か言えば望もうが望まないが問答無用でそれが願いと認識される。」
「それって願い事を言うまでは牛木は何も話さない方がいいってこと?」
「そうなるな。」
「不便だね。」
「さっさと願い事を言っちまえば普通に話せるんだからそうでもなくね?」
「そうかな。」
有明と藍がポンポン話しているとコホン、と咳払いが入る。
苦笑いした石上桜がいた。