不滅の妖怪を御存じ?
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カーン、と小さく鐘が鳴る。
茶色を基調とした部屋で、三十人ほどの生徒が正座していた。
その中には藍と佳那子、桜に千秋、紫月もいる。
藍の隣にはもちろん有明も。
佳那子以外の四人と妖怪一人は眠たげな顔つきだ。
シャーッと墨を擦る音が聞こえる。
今日の一時間目は書道だった。
髪をお団子に結んでいる女の先生が前で声を出す。
「前回皆さんに提出してもらったものに成績をつけ終わりました。成績上位者から貼り出していきます。」
藍はまぶたを半分降ろして先生の話を夢見心地で聞いていた。
前回書いた作品。
「輝き」だっけか。
そうこうしているうちに先生は早速上位の作品を貼り出し始めた。
力強く書かれた「輝き」。
半紙の左端には「石上桜」と書かれていた。
藍は目をしばたかせる。
「伊勢千秋じゃないんだ。」
思わず考えていたことが口から漏れる。
周囲の生徒がチラリと藍を見やる。
「桜くん、書道がすごく得意なの。桜くんのせいで伊勢くん書道だけは一位とれないんだよね。」
「へぇ。」
こっそりそう教えてくれた佳那子。
藍は三列前に座る石上桜の後ろ姿を見る。
ちょっとチャラチャラしている人に見えるのに。
彼は字が上手いのか。