不滅の妖怪を御存じ?
「有明は男子トイレのこと怖くないの?」
「怖えに決まってんだろ。さっきから鳥肌止まんねえよ。」
有明はそう言って早足で歩く。
そうして辿り着いたのは、白と桃色のサンゴで出来たアーチ状の門の場所だった。
黒い真珠があちこちに散りばめられている。
アーチの先にはでっしりとした扉がある。
「地上までは泳いで二分だ。」
「え。」
「俺が引っ張るから息持たせろよ。」
「え。」
目を点にした藍が状況を飲み込めていないうちに有明は大きな扉に手をかける。
ギギッと扉が開く音。
パアッと青白い光に包まれたと思った途端。
全身が冷たい水の中に投げ出されていた。
ギュッと首に回る手に力が込められた。
藍も目を瞑り男子トイレの小さな身体を抱きしめる。
グイグイと強い力で腰のあたりから引っ張られた気がした。
二分。
二分間。
冷たく息苦しい空間の中で藍はギュッと目を瞑った。