不滅の妖怪を御存じ?







ザワザワと、何かが蠢く音を聞いた気がして、竹内蛍は後ろを振り返る。
だが、海沿いの道には蛍以外誰もいない。

ほぅ、と息を吐いた。
姉の姿が見えないことで少し安心した。

勝手に家を出てきたのだから確実に怒られるだろう。
怒られるならせめて星をゆっくり見てからにしたい。
せっかく海まで来たのだから。

辺りに闇が落ちてゆく。
蛍は電車を乗り継いで海の方まで来ていた。

あの大き過ぎる家は息が詰まる。

開けた場所でのんびり星を見ていたい気分だった。
あと、家出したい気分。

コンッと足元の石を蹴る。
二、三回はねてポチャンと海に落ちた。

ザザ、ザザ、と潮騒の音。
その音の中に、変な音が混ざっている気がした。

ズリズリと、地面を何かが這いずるような。


「……何だ?」


竹内蛍は再び後ろを振り返る。
墨を落とした闇。

その中で、ゆっくりとアスファルトの上をいくつもの木の枝が動いていた。
その動きはナメクジのようだ。

植物というより動物。
気持ち悪いな、と竹内蛍は思う。





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