不滅の妖怪を御存じ?



「えい。」


試しに伸びてきた枝を足で踏んづけてみた。
さらにグリグリとアスファルトに押しつぶす。

すると木の枝がしんなりして動かなくなった。
死んだようだ。

どうやらナメクジのように動くこと以外は普通の木の枝と変わらないらしい。

害はなさそうだからいいか。
そう思い竹内蛍は再び海沿いの道を歩き出す。

すると。


「っぷはぁっ!」


ドパァッ。
ゴホゴホッ。

水から何かが上がってきた音がした。
咳き込む音からして人間が上がってきたのだろう。

音が聞こえたのは海の方から。
つまり、海から誰かが上がってきた。

しかも、溺れる寸前だったように咳き込んでいる。


蛍は勢いよく手すりへ走り暗闇の海へ声を張り上げた。


「大丈夫ですか!?」


バシャバシャという水の音とゴホゴホと咳き込む音。
どうやら海の中にいる人はとても蛍の呼びかけに応えられる状態じゃないらしい。



< 285 / 491 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop