不滅の妖怪を御存じ?
蛍は焦って首を左右に振り周りを見る。
「浮き輪は……ない!助け呼びますね……しまった携帯忘れた!」
一人でワタワタと蛍が右往左往していると、ゴフッと海に浸かっている人が笑った気配がした。
スーッと海面が反射してチラチラと光る。
溺れていたはずの人は自力で泳いで岸の方へ来れたようだ。
二、三歩進んで手すりから上半身を乗り出す。
目を凝らして海面からちょこんと飛び出している顔を見つめる。
思わずフッと蛍は笑みを漏らした。
「お前やっぱり只者じゃないよ。」
「そうかな。」
水気を吸った髪がおでこにはりついている。
暗い海でプカプカと浮くその姿はやっぱりどこか奇妙だ。
久しぶりに会った有田藍はびしょ濡れで、バツが悪そうに笑っていた。