不滅の妖怪を御存じ?
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ポタポタと髪の毛先から水が滴り落ちてゆく。
水を吸った服が重い。
岸に上がった藍は座り込んで靴下を脱いでいた。
その隣に蛍が座りこむ。
今が夏で良かったと藍は思う。
水に濡れた身体はそこまで寒くない。
有明と男子トイレは蛍の姿が見えた途端草むらに隠れてしまっていた。
「蛍はここで何してたの?」
「星見ようと思ってさ。それより藍、びしょびしょのままでいいのか?」
「放っておけば乾くでしょ。」
「絶対風邪ひくって。」
ケラケラと笑う蛍。
蛍にまともなこと言われるなんてちょっと新鮮だ。
藍は薄暗い中で微笑む蛍の顔を見る。
いつも通りの蛍だ。
そういえばここに来たのは星を見るためだと言っていたな。
やっぱりいつもの宇宙オタクの蛍だ。
ビショビショの髪をギュッと絞りながら藍は蛍に話しかける。
「蛍さ、宇宙飛行士になろうとか思わないの?」
「何だよ急に。」
「そんなに星が好きなら宇宙飛行士目指してみたら?」
暗い中でも蛍が目をパチクリさせているのが見えた。