不滅の妖怪を御存じ?









「空にある星を一つ欲しいと思いませんか?思わない?そんなら、君と話をしない」


ザザ、ザザ、という波の音を背景に竹内蛍が話し出す。
藍は静かにその声に耳をかたむける。

弓月が言っていたピエロ伝道者。
話そのものはかなり短いもので、何らかの主義だとか笑いだとかを何度も繰り返していた。
ぶっちゃけて言ってしまえば、藍にはよく分からなかった。


「蛙飛び込む水の音を御存じ?」


そう言い終わると同時に、どーよ?といった顔で藍を見る蛍。

あぁ、うん、ありがとう、と言いながらダンと有明の方を振り返る。
二人は藍の隣で体育座りをして小さくなっていた。


「話の意味、分かった?」

「全然」


有明のげんなりした声とふるふると顔を横に振るダン。
だよね、と藍も同意する。

一体弓月はこの話のどこに惹かれたのか。
言葉が良いとか何とか言ってた気がするが。
ケラケラと笑う蛍の声がする。


「まぁ、あれだ。星を一つ欲しいか?って聞かれたら欲しいって答えておけばいいんだろ」

「そうだね」


蛍と藍の会話に「それでいいのかお前ら…」と有明は呟く。
藍はピエロ伝道者はよく分からない、と心に書き留めた。




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