不滅の妖怪を御存じ?
「で、次どーするよ」
どこか投げやりな感じの有明の言葉。
「どうしようかねぇ」と藍も投げやりに返す。
敵である九木は今どうなっているのか分からない。
鬼道学園も敵になってしまった。
頼りの弓月はどこにいるのか分からない。
どうすればいいのだろう、と暗い海の揺れる水面を見つめる。
ゴロン、と隣で蛍が横になる気配がした。
「眠い。俺寝るわ」
「風邪ひくよ」
「夏だし大丈夫だろ」
マイペースだなぁ、と思いながら藍も砂浜に寝転がる。
ざらざらした感触。
ボフン、とダンも藍の隣に寝転がりモゾモゾと近寄ってくる。
ピッタリと張り付く暖かさに頭を撫でてあげれば気を良くしたのか藍のお腹に抱きついてくる。
カーッと蛍のいびきが聞こえてきた。
「……そういや、あの佳那子とかいう女から受け取ったやつは?」
一瞬有明が何のことを言っているのか分からなかったが、すぐに弓月からの手紙のことだと合点がいった。
「多分、弓月からの手紙。この暗闇じゃ読めないから朝が来るまで待つよ」
「そうか」
それから有明は黙った。
そこそこ暗闇に目が慣れてきていたので、彼がどんな表情をしているのか何となく見えた。
眉間にしわを寄せて、難しそうな表情をしている。
何だろう。
ツンツンとしているダンの黒髪をいじりながら、藍は有明の言葉を待つ。
潮の音にまぎれて、ポツリと有明が呟いた。
「多分、天狗は明日にはお前に会いにくると思う。その手紙のことも含めて、九木に対して何らかの策があるはずだ」
「……うん」
「その竹内家の男は置いてけよ。俺らに、そいつを九木から守ってやれる余裕はない」
波の音が遠くなった気がした。
ふーっと、緩く息を吐く。
九木の狙いはアテルイの血筋、藍だ。
藍と一緒にいれば蛍も危ないのだろう。
「分かった」
なんとかそれだけ応えられた。
ジャリ、と有明も寝転がる音がする。
置いていく。
有明の言葉を考えた。
弓月も、鬼道学園も、蛍も。
なんだか、今日一日で敵になってしまったり、離れてしまったり、離れなくちゃいけなくなったり。
ずいぶん皆と会えなくなってしまった。
まぁ、弓月はだいぶ前から会えてなかったけれど。
ふぁ、と一つ欠伸が出た。
瞼が重い。
ゆっくりと、藍は眠りに落ちた。