不滅の妖怪を御存じ?
「お前、本当にどうすんだよ。天狗の言うことを聞くのか?人間側か、妖怪側か?どっちなんだよ」
ぐいぐいと詰め寄ってくる有明。
糾弾するようなその口調に藍は瞬きを何度か繰り返す。
どっち、とは。
有明は、妖怪側だと藍に言ってほしいのだろうか。
それとも、藍の考えをハッキリさせておきたいのか。
オロオロと不安そうに藍と有明を見やるダンのことを考える。
それから、置いていってしまった蛍のことを思い出す。
竹竿を振り回す弓月の姿。
フン、と藍を見て鼻で笑う千秋。
目を細めて笑う佳那子。
有明のフワフワとした茶色い髪。
しゃんと立つ桜と紫月。
それから。
しばしの沈黙の後、藍はゆっくり口を開く。
「……どっちも」
「は?」
ハッキリしない藍の答えに有明はドスの効いた声を出す。
「私の知り合いには生きててほしい」
藍が言った言葉を、数秒有明は考える。
その表情はなんとも言えず、怒ろうにもひっかかりがないというような。
「知り合い?」
「弓月と、有明とダンは生きててほしい。カッパとか、その辺はまぁ、私への対応ひどかったし、生きようが死のうが勝手にしてって感じ。あ、やっぱり弓月には色々言いたいことがあるし、弓月は絶対生きててほしい」
考えているうちに藍自身も自分がどうしたいのか分からなくなっていた。
だからとりあえず自分が思っていることをそのまま伝えることにしたのだ。
「蛍とか佳那子は好きだし、生きててほしい。紫月も桜も。千秋は、ケガくらいすればいいけど死なれたら気分悪いだろうね」
有明が下を向いて黙り込んだ。
ぎゅっと眉間にシワが寄っている。
痛いほどの沈黙。