不滅の妖怪を御存じ?
何を考えているのか分からない。
阿知が有田藍を見てまず最初に思ったのがそれだった。
肩にかからない程度の黒髪は中心で分けられ額があらわになっている。
見た目は幼い。
だが、その心の読めない顔つきにより何故か一瞬大人びているようにも見える。
兎にも角にも、阿知が妖怪として生を受けてから初めて対峙した人間は、なんとも不思議な雰囲気をしていた。
「あなたは?」
「天狗」
お前に名前を教える義理はない。
言外にそう含め、阿知は有田藍の手を引きその身体を抱きかかえる。
やるべきことは早く終わらせるに限る。
さて、飛ぶかと思った時、腕の中でもぞもぞと少女が動き何か抗議していることに気付いた。
ギリッと睨みつける。
「何だ」
「ダンは?あの子も連れて行ってよ」
少女が指差す先。
禍々しい妖気を放つ東北の妖怪。
何だってこんな厄介なものを連れているのか。
阿知には全く理解できない。
今まで感じたことのない妖力。
どんな力を持つのかも未知数。
気味が悪い、と阿知は心底思う。