不滅の妖怪を御存じ?
「無理だ。壱与の結界がある限り竹内家の敷地内に妖怪が入ることはできない」
そう言い捨てると、今度こそ阿知は飛び立った。
ビュオォォォッと風をきる音。
身体に当たる風がヒリヒリと痛い。
自身の身体を抱える阿知の腕を必死で掴みながら、少女は下へ向かって叫ぶ。
「ダン!安全なところで隠れてて!」
阿知は手加減無しのスピードで始めから飛んだので、少女の言葉が最後まであの妖怪に届いたかどうかは分からない。
痛いくらいの風をその身に受けながら。
阿知はあの妖怪の黒い瞳を思い出す。
ひやりとした印象の目だった。
嫌な予感がするな、と阿知は思った。