不滅の妖怪を御存じ?
人首丸
⌘
竹内家は非常に穏やかで平穏で、それが異常だった。
庭の大きな池には何匹もの錦鯉が優雅に泳いでいる。
桜、さるすべり、椿。
あらゆる植えられた植物はきれいに手入れされている。
コン、と静かに時を刻む鹿おどし。
外では九木の力の放出によって大変なことになっているというのに、竹内家はその非日常から隔離されていた。
「あんまりキョロキョロしないでくんない?貧乏くさいから」
「うるさいな」
千秋と軽い応酬をしながら板張りの廊下を歩く。
古き良き日本の家という感じだ。
大きさは把握出来ない程だが。
それから、家の中は異様に静かだった。
こんなに広い家なのに、藍たち三人以外誰もいない。
非常時だから出払っているのだろうか。
藍が不思議に思っている時、「安全のために皆避難させました」と見透かしたように言う天音。
それから「本当は、」と振り向きもせずに続ける。
「本当は、竹内家の当主にと父が望んだのは蛍なのです」
緩く結ばれたみつあみが天音の背中の上で揺れる。
千秋と藍は何も言わなかった。