不滅の妖怪を御存じ?
「弓月も坂口安吾の他の小説色々読んでみればいいじゃん。」
坂口安吾だったら堕落論が有名なはずだ。
藍は床に埋め込まれている石に意識をやりながらそう言った。
数秒の沈黙。
弓月は竹竿を振り続けたまま答えた。
「いや、好きなものは好きなままでいたいのだ。」
藍は思わず手を止める。
そして弓月が言ったことをよく吟味し、考えてみる。
「つまり?」
「わたくしは、坂口安吾に失望したくない。」
失望。
他の作品がピエロ伝道者よりも劣っていたときの失望感を味わいたくない、そんなところだろうな、と藍は納得した。
「失望とか言ってもらそれは弓月の理解力が足りないだけじゃない?」
「そうであろうな。確かにわたくしはピエロ伝道者も全く理解できなかった。」
すんなりと弓月は認めた。
「……そうなの?」
内容も理解できていなかったのに、好きだと豪語し竹竿を振り回していたのか。
藍は呆気にとられる。