不滅の妖怪を御存じ?





「もう分かるだろう?口を閉じた二枚貝は、俗説でいう玉手箱だ。乙姫は吹き飛ばした浦島太郎の時間三百年分をその貝に封じたんだ」


突然変わった風景。
頼れる人もいない。
そして、亀が話しかけてきた。
自分が殺したのと、同じ種の亀が。

嫌な予感がしたのだろう。
浦島太郎はその貝を受け取らなかった。
彼の勘は正しかったが、彼がとった行動は間違っていた。

亀は浦島が貝の受け取りを拒否すると、その貝を海へ戻した。
海水に浸った貝。
それは、生き物として当然呼吸をする。

パカリと、貝が開いたのだ。


「浦島太郎は一瞬で老人になり、一瞬で灰になった。そしてそのまま風に飛ばされ、後には姿形も見えなかったらしいよ」

「怖っ」

「妖怪だからね」


千秋はなんてことないように言ってから、パンと手を叩いた。






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