不滅の妖怪を御存じ?
「だから、乙姫に君を6550万年分吹き飛ばしてもらえばいい」
「それ私灰にならない?」
「玉手箱は開けなければいいんだ」
まぁ、交渉がうまくいくかは分からないけど、と千秋は言う。
竜宮城の乙姫様。
彼女は妖怪で、当然人間への印象は良くない。
伊勢千秋の命と引き換えに。
その条件で、本当に飲んでくれるのだろうか?
「伊勢君はさ、」
「ん?」
「それほどの価値があるの?」
やばい。
乙姫様にとって、妖怪にとって、伊勢家の血は殺すべき脅威として捉えられているのか、とか。
そういうニュアンスで言ったつもりだったのに。
言葉にしたら失礼にも程がある言い方になってしまった。
まずい。
藍は冷や汗を流す。
「さぁ。まぁ、君よりは価値はあると思うけど」
全く気にしてない様子でそうのたまう千秋。
本心からそう言っている姿に、藍はこの男張っ倒してやろうかと思った。