不滅の妖怪を御存じ?
「ダン?」
バキバキと、足元の木々を折り、ポイポイと投げ捨てる。
何をしてるのかと思えば、地面を出したいようだった。
カリカリと、地面に枝で文字が書かれていく。
『そろそろ』
「そろそろ?」
藍が確認すると、ザッと足で地面の文字を消していく。
そしてまた枝を突き刺し書き出す。
『おわりたい』
「おわりたい」
ボンヤリと、藍は呟いた。
ダンは藍を見上げコクリと頷く。
その顔はふわりと笑っていた。
そろそろ終わりたい。
何を。
生きるのを、か。
それとも、妖怪としての人生を、か。
「……ダン」
ダンに再び手を握られた。
そして、こっちだというようにグイグイ手を引っ張られる。
早く行こう、という顔をしている。
藍はダンの封印を解いた時のことを思い出した。
蛍が所有している山の深く。
ボロボロの小屋。
鬱蒼とした木々。
あの場所に千年間。
ダンは千年近くの日々、一人でずっとあそこにいたのか。
そろそろ終わりたいというその言葉の意味もなんとなく分かった気がした。