不滅の妖怪を御存じ?
⌘
ぐわりと力強い何かに足を掴まれる。
え、と思う間も無く藍は引きずられるように倒れこんだ。
ズズ、と両足に太い木が絡みついているのが見えた。
「貴様、天狗が匿っていた一族だな」
冷たい声が上から降ってきた。
ハッとして顔を上げると、プンと鼻につく匂い。
雨の日の木々の匂いと、獣臭さが混じって変な感じがした。
目の前にギョロリとした瞳。
藍の頭より大きいのではないかと思われるその瞳は、爛々と光っていた。
千、とはっきり見える文字。
九木だ。
ダンが震えて藍のそばに縮こまる。
「弓月は死んだ」
ハァ、と目の前に湿った鼻が現れる。
何の生き物となっているのか。
九尾の狐だったものが牛木となって、今は。
ビッシリと生えた黒い毛に覆われたその全体像は、大きすぎて見えない。
「弓月は、もういない。我が殺した」
はぁぁ、と重い声。
藍は目を瞬いた。
この大きな生き物相手に、なんとかうまくやりこめて6550万年前に飛ばされなければならない。
全くできる気がしなかった。