不滅の妖怪を御存じ?






「獣は空腹だったら殺す。人間は、満腹でも殺す。満ち足りていても、獣を殺す。弱いままのくせに、他の力を使い、頂点に立った気でいる。何様のつもりだ」

すぅ、と藍は息を吸う。
今だ。
やるなら、今。


「……人間様」


喧嘩を売るなら、今しかないと藍は思った。

ここで九木を完全にイラつかせる。
後先のことを、考えられないくらいに。


「人間様だと?笑わせるな。翼も牙も鋭い爪も確かな嗅覚も持っていないくせに、思い上がるな」

「持ってないから、進化したんです。生身じゃ勝てないから、弓矢や槍を作って。安定した食糧が取りたいから、自分たちで耕作して、考えて、進化したんです」


藍はキッと九木を睨みつけた。
グルルルル、と背筋が震えるほどの唸り声が響いた。

負けじと背筋を伸ばす。

進化だ。
翼がなくても、人は空を飛べる。
ヒレがなくても、人は海を渡れる。
考えて、自分たちの足りないところを補おうとするのは、進化だろう。





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