不滅の妖怪を御存じ?
「自然界で生き残る生物って何だと思います?進化し続ける生物です。強い生き物じゃない。進化し続けた生き物が生き残るんです」
「黙れ」
「変わろうとしない奴らは、人間が殺さなくたって遅かれ早かれ死にます。自然は破滅と再生を繰り返してるんですから」
殺気を痛いくらいに感じる。
やっぱり、九木も弓月も妖怪なのだな、と藍は張り詰めた空気の中で思った。
九木が言っていることは、弓月が今まで呟いていたことと大体同じだ。
『人間が気にくわない』
『機械など、破滅のための道具だろう』
『何でも出来る気になって、何様のつもりだ』
かつて弓月が言っていた言葉が思い出される。
いつも藍はふうん、と他人事のように聞いていた。
だけど、ほんの少しだけ。
心の片隅。
そんなに否定するほどかなぁ、と思っていた。
いつでも水が飲めるのだ。
夜でも明るく照らしてくれる。
飛行機でも車でと船でも、行きたいところに行けるのだ。
そりゃあ、色々道を間違えて失敗したこともある。
でも、今の生活は、過去の人たちが幸せになろうと努力を重ねた結果なのだ。
より良く生きようと、人間が積み重ねてきたものだ。
それを、破滅の道だと一言で終わらせないでほしい。
足りないものを補って。
やりたいことをやろうとして。
知りたいことを知ろうとして。
そういう欲求が、人間にはあって、他の動物にはなかった。
その結果が今だ。
それだけのことだ。