不滅の妖怪を御存じ?
藍はからからの口を開き、さらに九木を煽った。
「妖怪の頂点にいて、自然の代表みたいな顔してるくせに、地球がどうやってできたかも知らないんでしょ」
生き物が大繁殖した時期があったことも。
逆に、たくさん絶滅した時期があったことも。
「今しか知らないで、何も考えずに、ただ生存本能に従って行きてるだけでしょう」
九木は不愉快だと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「生きるとはそういうことであろう。我らからすれば、過去のことなど何の意味も持たぬ」
過去の、ことなど。
藍は小さく呟く。
「……知ってますか?今から6550万年前に、恐竜という生き物が地球の頂点に立っていたんですよ。だけど、その恐竜が一瞬で滅んだんです」
「何が言いたい」
「自然なんてそんなものだってことですよ。滅びる時はちゃんと滅びる。自然の頂点に立っていた恐竜があっさり滅んだように」
ゆっくりと、大きな瞳が動く。
思ったよりも九木の反応が悪い。
なんというか、遅い。
怒るか馬鹿にするか、それなりの感情を向けられればやりやすいものを。
まずいなぁ、どうしようと藍は思った。
千秋が言っていたように、九木を今とは別の時代へ送るよう仕向けなければいけないのに。