不滅の妖怪を御存じ?





藍はからからの口を開き、さらに九木を煽った。


「妖怪の頂点にいて、自然の代表みたいな顔してるくせに、地球がどうやってできたかも知らないんでしょ」


生き物が大繁殖した時期があったことも。
逆に、たくさん絶滅した時期があったことも。


「今しか知らないで、何も考えずに、ただ生存本能に従って行きてるだけでしょう」


九木は不愉快だと言わんばかりに鼻を鳴らす。


「生きるとはそういうことであろう。我らからすれば、過去のことなど何の意味も持たぬ」


過去の、ことなど。
藍は小さく呟く。


「……知ってますか?今から6550万年前に、恐竜という生き物が地球の頂点に立っていたんですよ。だけど、その恐竜が一瞬で滅んだんです」

「何が言いたい」

「自然なんてそんなものだってことですよ。滅びる時はちゃんと滅びる。自然の頂点に立っていた恐竜があっさり滅んだように」


ゆっくりと、大きな瞳が動く。
思ったよりも九木の反応が悪い。

なんというか、遅い。
怒るか馬鹿にするか、それなりの感情を向けられればやりやすいものを。

まずいなぁ、どうしようと藍は思った。
千秋が言っていたように、九木を今とは別の時代へ送るよう仕向けなければいけないのに。




< 460 / 491 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop