不滅の妖怪を御存じ?
だが、九木も藍の言葉にはそれなりに思うところがあったのか。
ゆっくりと、口を開いた。
「貴様ら人間は、思い込みが激しい」
「思い込み?」
「我が何千年生きたと思っている。こうなるかも、こうなるはずだ、の思い込みで人間が同族を何人も殺してきたのをこの目で見てきた。確定的な根拠もなく、何万年も前の話をして、自分たちは賢いと思い込んでいる」
阿保だろう、と九木は言った。
藍はこの流れならいけるんじゃないか、と思った。
そしてできるだけ意地悪く、ニヤリと笑ってみせた。
「確かめてみます?」
「……」
「人間の思い込みが、どれほど真実に近いか」
ただの思い込みでも、何百年もの知識と研究を重ねたうえでの思い込みだ。
九木はフシューッと、生臭い息を吐いた。
「……竜宮の者、出てこい」
九木が腹を決めたようだ。
竜宮乙姫を呼び出し、自分の帰り道を用意しようとしている。
藍はごくりと唾をのむ。