不滅の妖怪を御存じ?
「聞こえてるか?」
訝るようにそう聞いてくる。
有明が頭を動かす。
ぐわん、と世界が揺れた。
ゆっくりと、腕を上げ、人差し指を差し出す。
「穴?」
ぼんやりとした頭で、先ほどまで九木がいた穴を指差す。
「中に、竹内の、人間が、」
有明の言葉は人間には聞こえない。
それでも、指差した先に、素早く伊勢家の男以外の三人が動いた。
穴の中を覗き込み、何か呼びかけている。
残った一人は動かない。
じっと鏡を見つめている。
「時間がないんだ。やってくれ」
伊勢家の血と、石上家の七支刀と、有明の能力の取引。
男の言っていた言葉を有明は思い出す。
好きにしろと言われても。
自分がどうしたいのか、有明には見当もつかなかった。
ようやく感覚が戻ってきた足を動かす。
手のひらに力を入れれば、地面からみずみずしい自然の息吹が感じられた。